作成者: Denso Agri Lab

Table to Farm / Farm To Table #2 イベントレポート


お米つくりとテクノロジーを掛け合わせたら、何が起こる?

私たち、日本人にとっては切っても切り離せない「お米」。このお米とテクノロジーを掛け合わせたら何が起こるだろう?問いうテーマで 「Table to Farm / Farm to Table #2」は開かれました。

農業とテクノロジーというと、まるで異なるもののように感じられるかもしれませんが、農耕が始まってから人類が著しい進展を見せた歴史を見ることができるように、そもそも、農業とテクノロジーは二人三脚で進展してきたとも捉えられるのではないでしょうか。

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今回のゲストには、TechRiceでテクノロジーを使った田んぼ管理を行うhalさん、愛知県農業総合試験場山間農業研究所稲作研究室でお米の育種を行う池田彰弘さん、株式会社デンソーでProfarmを担当するを岡田隆右さんをお呼びしました。

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トップバッターはTechRiceのHalfdan Rump(以下、hal)さん。渋谷区のIT企業でエンジニアとして働く傍ら、千葉県の鴨川市にあるHackerfarmを実験農場として、センサーを利用した水田の水位調節システム「TechRice」の開発を行っています。

お米つくりためには、田んぼの水位や温度を調節するために、朝晩の1日に2回、田んぼの水門を開けたり閉めたりする仕事があります。1日2回と聞くと、それほど大変ではないと思うかもしれませんが、田んぼが複数に分かれていると、それだけのために従業員を雇わなけらばならないほど大変な作業になります。これを、「TechRice」が自動で行うことで、業務の負荷を下げようという試みを紹介していただきました。

 

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次は、愛知県農業総合試験場山間農業研究所稲作研究室でお米の品種改良を行う池田彰弘さん。テクノロジーを使って効率的に品種改良を行う方法や、「短鎖アミロペクチン」を活用して柔らかさが持続する手法を紹介していただきました。

 

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株式会社デンソーの岡田隆右さんからは、デンソーのテクノロジーを使った「profarm」という施設農場向けソリューションで、センシング技術や作業支援ロボットが果たす役割について紹介をしていただきました。

 

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続いては、おむすび屋「山角や」の水口拓也さんによる、おむすびワークショップ。”おにぎり”ではなく”おむすび”という結ぶことにこだわる「三角や」さんのワークショップでは、ペアを組んだ相手のために”おむすび”をむすんであげ、それを食べ合うという内容。

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自分のためにむすんでもらった”おむすび”は、格別な味わいなのでした。この笑顔が全てを物語っていますね。

 

 

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そして、最後のワークショップでは参加者の皆様に「これからの、お米に対して期待すること」をテーマに、アイデアを考えてもらいました。

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すると

・チャーハン米、おむすび米、など料理に適したブレンド米があるといいのでは?
・お米のバリスタ外る専門店が欲しい
・料理に応じて炊き方が変わる炊飯器が欲しい

など、今回の前回同様に様々なアイデアが生まれました。

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食や農業という、誰しもに関係するテーマだけに、専門家であるないに関わらず、誰もが真剣に向かい、自分なりの答えを出すことができる良いイベントになったのではないかと思います。次の「Table to Farm / Farm to Table」をご期待ください。

 

 

Table to Farm / Farm To Table #1 イベントレポート


おいしい野菜ってなんだろう?

そんな疑問を、みんなで一緒に考えるイベント「Table to Farm / Farm To Table #1」を、2016年3月6日(日)に渋谷FabCafeで開催しました。

これは、渋谷の真ん中で、Table to Farm を、 Farm To Tableを繋ぎ、野菜を作る人、食べる人、運ぶ人、売る人など、野菜や食に興味のある様々な人がボーダレスに集まり、一緒に「おいしいって何だろう?」を考え、デザイン、テクノロジー、サイエンスといった、様々な現代の知恵を使って、もっと楽しい未来を見つけよう!という、言うなれば、「みんなで”おいしい”をLabする」プロジェクト。

渋谷という場所柄があってか、参加者は、IT系食品企業、IT系土壌センター、某検索エンジンなどのIT系の方や、キュレーション施設、デザイン会社などにクリエイティブ系の方が多く見られましたが、自然食レストランやスーパーマーケット、料理人、といった食の関係者の方や梨農家など、様々な方々が集まりました。

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◼︎データで見る微生物の働らき

最初のクロストークのテーマは「データで見る微生物の働らき〜堆肥ミニ菜園に触れながら」

登壇いただいたのは発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。堆肥を販売するレストラン「taihiban(タイヒバン)」のシェフを務める森本桃世さん。食品の微生物研究を行う愛知産業科学技術総合センター」の近藤徹弥さん。

発酵の専門家、シェフ、研究者という様々な視点から、微生物の仕組みや特徴、また「taihiban」のオリジナル堆肥の分析データを調べていただいたり、実際にその堆肥を使って育てた野菜のおいしさの話をしていただきました。

_KIT2298森本桃世さん)「taihiban」でシェフをしながら、“みんなのお母さん”として、お客さまの食生活のアドバイスも行う。普段は食材や堆肥のデータで見る機会がないので、とても楽しみです。」と、沢山の野菜と共に登場。

hiraku_6小倉ヒラクさん)微生物研究家とデザイナーの二足の草鞋を履いている。ソーシャルデザインの仕事をする中、菌を好きになってしまってこの道に入ったという。「菌に興味のある人は、カビなら安い顕微鏡でも見れるので、初心者にもおすすめ。」という驚きのアドバイスも。

 

kondo_1(近藤徹弥さん)愛知産業科学技術総合センターで食品や微生物の分析を行う。藁や枯れ草や動物の糞などの原料を発酵させて堆肥にしてから畑に入れる理由や、それらの素材が発酵し堆肥になるまでの過程を丁寧かつ分かりやすく説明してくださいました。

 

◼︎野菜を食卓に届ける方法

次のクロストークのテーマは「野菜を食卓に届ける方法」。

登壇いただいたのは、岐阜県飛騨市でトマト農家を営む「長九郎農園」の松永宗憲さん。「株式会社デンソー ロボティクス事業部」で、農業用ロボットの企画開発を行う磯貝俊樹さん。

松永さんからは、トマト農家の視点から見た“おいしいトマト”や、そのおいしさをお客様に届けるために必要な流通のお話を。そして、磯貝さんからは、テクノロジー技術を扱う企業から見た、未来の農業に貢献できる可能性についてのお話をしていただきました。

matsunaga_1(松永宗憲さん)「taihiban」の堆肥を使ったところ、トマトの味がよくなったと話す。畑の成分のデータ解析をするなど、テクノロジーも積極的に取り入れている。

isogai1(磯貝俊樹さん)トマトも冷凍する際に温度の管理を行うことで味が変わるんです。私たちの持っているテクノロジーやセンサーの技術で、都会の人が、もっとおいしい野菜を食べられるようになったら嬉しい。と人間味のあるコメント。

 

◼︎農家メシ

そして、ちょうどお腹が空いたタイミングで、登場するのは「農家メシ」

シェフの森本さんの登場とともに、大根、キャベツ、人参、水菜、春菊などの、山のような野菜が会場に運ばれると、「ワー!オイシソウ!」という歓声が上がりました。

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会場の中央に登場した調理台には3台のコンロが設置され、その様子は実験室のようです。

コンロ1: 水の入った鍋で煮る

コンロ2: プライパンで焼く

コンロ3: 油で揚げる

自分で選んだ野菜を、3つの異なる方法で調理して食べる、という試みです。調理法の違いによる、野菜の味や食感の違いを楽しんでいただきながら、「おいしい野菜」について語り合う交流の時間となりました。

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◼︎サスティナブル・ドレッシング・サラダの誕生

実は今回のイベントから、面白いアイデアが商品として世に送り出されました。それは、FabCafeの新メニュー「余剰野菜で作る サスティナブル・ドレッシング・サラダ」です。

※農業の抱える問題の1つとして、余剰野菜の破棄があります。これは、さまざま理由により販売できずに余ってしまった野菜を、破棄をせざるを得ないという問題です。

イベントの終盤のディスカッションタイムで登壇者や参加者から、「”おいしい”を作るためのアイデア」を募集したところ、登壇者の桃世さんからこんな提案がありました。

「今日食べてもらったドレッシングは、全て野菜から作ったドレッシグなんです。私は、野菜のドレッシングで食べるとことを提案しているの、野菜をピューレにすれば、簡単に作れるのよ、オープンソースだから教えてあげる!台所に余った野菜で作ればいいのよ」

すると、一人のお客様から「農家さんが、廃棄する野菜で作ったらどうでしょう?」という声。

それを聞いていた、ロフトワークスタッフから、こんな提案がありました。「じゃあ、明日から、いつも野菜を仕入れている農家の破棄野菜を買い取ろう。そして、野菜ドレッシングを作ろうよ!それを、ドレッシングにして新メニューにしよう!」

[余剰野菜] × [食のプロの技] × [参加者のアイデア] × [FabCafeという食を提供する場所]

と、同じ場所、同じ時間に、様々な要素が合わさったことにより、瞬間的に一つのサスティナルブル・フード・デザインが誕生しました。

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しかも、これはおそらく、これから現実化するアイデアの氷山の一角。

なぜならば、最後に、参加者に書いてもらったアイデアシートには、「私の働いているレストランの屋上で菜園が作れるかも」「IT技術でセンサリングのプラットフォームが作れるかも」といった様々な、実現可能なアイデアと、参加者一人一人が持っているリソースが詰まっていたからです。

渋谷の真ん中で、「Table to Farm を、 Farm To Tableを繋ぎ、おいしいをLaboしよう」そんな夢を見るような気持ちで始まったイベントですが、開いてみると、沢山の希望や、沢山のアイデア、そして沢山のビジネスの種が詰まったイベントとなりました。これから、このプロジェクトがどのように発展をしていくのかが楽しみでなりません。

「Table to Farm / Farm To Table 」第2回目は、4月24日(日)です。

明日の未来を作るのは、一人一人の希望から。皆様の参加をお待ちしています。

 

 

キックオフ FabCafe飛騨合宿


2015年11月11日、Denso Agri Labプロジェクトのキックオフ合宿を、岐阜県飛騨市にあるFabCafe飛騨で開催しました。

デンソー、ロフトワーク、FabCafeのプロジェクトメンバー全員が集まり、これからプロジェクトで行うことの意識を合わせることが目的です。プログラムは、農家視察、ワークショップ、そして、飛騨のご飯や地酒をいただきながら「おいしい!」を共感することです。

hida_0紅葉の始まった飛騨古川の街並み。

 

◼農家視察1 有機農業を営む「ありがとうファーム」

最初に視察に伺った「ありがとうファーム」は、農薬や化学肥料を使わずに野菜や果物を作る小規模な有機農家です。自家製の肥料を使ったこだわりの土作りを土台として、循環型の野菜作りを行っています。そして、地元の障がい者支援のNPOと連動しながら、障がいのある方にも可能な農作業の仕事をしてもらうことで、自立支援の活動も行なっているとのこと。

今回の視察では、「ありがとうファーム」の土づくりの秘訣や、少人数で畑を運営することのご苦労を伺いました。

hida_8自家製堆肥で土作りをした畑は、程よい弾力でフカフカしています。

hida_9完熟のピーマンを生のまま食べてみると、甘い!生まれて初めての体験です。

hida_6農家さんが苦労している作業の中で、「テクノロジーが解決できること」を探ります。

◼︎農家視察2 りんご農家を営む「黒内果樹園」

次に伺った、黒内果樹園」は、同じ志を持つ9世帯のりんご農家で結成された共同果樹園。現在は、できるだけ薬剤を頼らず、美味しいりんごを栽培する為に、ミツバチによる受粉にも挑戦をしているとのこと。

「黒内果樹園」では、クマによる獣害や、工場の機械化の遅れ、後継者不足の問題を教えていただきました。実際に農家さんから話を聞くことで、解決すべきポイントが見えてきます。

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直売所のお店の中で話を聞きながら、りんご農家が抱える問題が見えてきます。

◼︎僕たちの「おいしい野菜」ワークショップ

「私たちは、このプロジェクトで何をしたいのだろう。」プロジェクトのコンセプトを言語化するために、プロジェクトメンバー間のワークショップを開催しました。

  • 現状の農業や食に対する疑問や問題
  • 一人一人の考える「おいしい」体験
  • プロジェクトで行いたいこと

このようなことを、様々な角度から洗い出し、アイデアを出し、まとめていくことで、プロジェクトスタッフの考える個々の像が、一つの共通の像となって明確に浮かび出されてきました。

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みんなの発言やアイデアをグルーピング

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私たちに何ができるかを、真剣に考えました。

◼︎おいしいご飯とおいしいお酒でキッックオフ!

飛騨合宿の本当の目的は、みんなで一緒においしいTableを囲むこと。手作りのおいしい手作りご飯と、飛騨の地酒を飲んで、プロジェクトスタッフの心が一つになり、みんなのおいしい笑顔を見るためのプロジェクト、Denso Agri Labがスタートしました!

hida_12飛騨の地酒、地ビール。飛騨牛、飛騨の山で採れたキノコ鍋、飛騨で採れたイノシシ、飛騨の「長九郎トマト」、など丸ごと、飛騨を食べつくして、プロジェクトがスタートしました。