4月24日に開催された「Farm to Table / Table to Farm #2」に登壇したエンジニアのHalfdan Rumpさんにインタビューを行いました。Halfdanさん(以降Halさん)は水田にセンサーを設置して水位や温度などのデータをインターネットで見られるようにすることで稲作をサポートする「Tech Rice」プロジェクトを行っています。テクノロジーが農業に貢献できる可能性について伺いました。
■Tech Riceとは
―Tech Riceプロジェクトが始まった経緯について教えてください。
私は、デジタルガレージという会社で研究開発のエンジニアをしています。Tech Riceプロジェクトは約2年前にChris Wangさんからの発案で始まりました。Chris Wangさんは千葉県鴨川市に住んでおり、そこでは農業をめぐる問題がありそうだから、それを新しいプロジェクトでやったら面白いのではとのことでした。
そこで実際に鴨川の農家を訪ね、水田の水位を測る小型の装置とそのデータを可視化する取組みを始めました。装置は水田の水位を数分ごとに測り、その記録はインターネット上の保管場所(要パスワード)に送信されます。水田の持ち主は、手元のパソコンやスマフォで現在から過去に遡って水田の水位を確認することができます。
これにより、持ち主は水田に足を運ばずに水漏れや異常を知ることができ、毎日水位の確認をしに田んぼを見に行くという負担が軽減されます。特に、小規模な農家向けに低コストで提供できることが強みです。
■テクノロジーで農家の負担を減らす
―Tech Riceにはどのような技術が使われているのですか?
マイクロコンやセンサー、ハード、通信など様々な技術を使っています。センサーは小さなソーラーパネルで動かしていますが、それはプロジェクトメンバーでもある秋葉さんの専門分野。他のメンバーもそれぞれ異なった技術を持っていて、それがこのプロジェクトに生かされています。私は大体のことが把握できるし、一番夢中になってやっていたので、このプロジェクトのリーダーとなっています。
―今の農家が抱える一番の問題はなんだと思いますか?
鴨川を訪ねたときに感じたのは高齢化と、若い農家の減少ですね。農家の数が減ると、1人あたりが管理しなければいけない田んぼの数が増えていったり、高齢化によって農作業自体が農家に負担になってきたりします。また、九州を訪れたときには、もともと農地だった場所が空き地になって荒れてしまい、イノシシが出没するという問題もあると聞きました。
全ての問題をTech Riceで解決できるとは思ってはいませんが、水位や温度など田んぼの様々なデータを集めることが、そうした問題を抱える農家の助けになればと思います。
■エンジニアとしてリアルな問題を解決したい
―もともとHalさんは農業に関心が高かったのですか?
いえ、そういうわけではありませんでした。でも、プロジェクトが始まったときに、これはエンジニアリングのプロジェクトとして面白そうだと思いました。必要性もあったし、装置を作ることは農家の人にとってもいいことにつながるだろうし。私はエンジニアの技術を使って、「本当の問題」を解決したいんです。単純に面白いものを作るというよりは、人の助けになるようなものを作りたいですね。
それに、里山ってすごく美しい風景なんですよね。すごくきれいな山と田んぼがあって。でも今何かしないと、どんどんその景色は失われてしまいます。私のモチベーションは、こういった美しいところを守りたいということもあります。
■Tech Riceの広がり
―鴨川以外の地域にも、今後Tech Riceプロジェクトは広げていく予定ですか?
はい、広げるつもりです。今は浜松にFabラボを作った人が興味を持ってくれています。彼は父親が農家なので、そこにセンサーをつけるという話が来ているので、そこでできればと考えています。
ある程度開発が進んだので、装置の販売もそろそろできそうです。価格は15,000円に設定しました。ただ、具体的なビジネスモデルにコミットする前にクラウドファウンディングをやろうと思っています。まずは、農家が簡単に使ってもらえるようなキットを作るつもりです。
それから、このシステムはすごく応用が効くものなので、田んぼ以外にも多様なことに使えるのではないかと考えています。例えば、イノシシを捕獲する罠にセンサーをつけて、イノシシが畑に入ったら通知がくる、といったように。あとは田んぼだけではなく、野菜の育つ畑でもデータ収集に使えると思います。
―このDenso Agri Labのプロジェクトは農業と、テクノロジーやサイエンスが組み合わさることで広がる可能性を考え、伝えるプロジェクトですから、一緒に何かできたらおもしろそうですね。
それはすごく大事なことだと思います。農業に関するテクノロジーの取組みは様々なところで行われていますが、まだあまりつながってないので、Denso Agri Labのようなかけ橋をつくる仕掛けはこれからもっと必要になっていくでしょう。
先日の「Farm to Table / Table to Farm #2」でお会いした池田さん(愛知県農業総合試験場)のイネの品種開発のお話は興味深かったです。私たちは基本的にITの技術者なので、こういう別の分野の人と出会い、その知識に触れる機会は貴重です。例えば、私たちのとっているデータが彼のいもち病(コメに最も多く出る病気)の研究にも役立つとしたら面白いかもしれませんね。今後はもっと様々な場面にTech Riceの技術を生かしていきたいです。
Halfdan Rump (TechRice)
I came to Japan six years ago and went to graduate school. After that I landed a job as a software developer with a focus on web and IOT applications.In my personal life I’m passionate about food in general, and usually have some slow cooking project going on. I’ve made sausages and my own smoked bacon, I regularly bake traditional Danish sour dough bread (probably none like it in all of Japan!), and I’m currently exploring cheese making. I’ve been living in big crazy Tokyo for a while now, and everywhere I go the supermarkets sell the same stuff. It’s boring… I want more variety and more choice with the food that I eat. Since I’m not cut out to be a farmer, I thought that instead I can develop technology that helps the farmers the grow the food that I eat. And hopefully make a difference in sustaining small style agriculture. That’s why I’m interested in smart agriculture, TechRice being one such project.
http://techrice.iotree.org/jp.html